【感想】放課後!ダンジョン高校(9)

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前回で宇佐見くんとシオちゃんの話が完結。最終回の大団円だと思っていたら、新キャラと「to be Continued」の文字。
これ以上、なにがどう続くのだろうと疑問に思いつつ、待ちに待った9巻が今月発刊されました。

表紙の雰囲気もずいぶん変わりました。新章開始の意気込みが伝わってきますね。

 

さて、この刊のあらすじをざっくり説明すると…。


ダンジョン探索に憧れて島にやってきた新キャラ「最上トキ」が東屋に見込まれて古美術部に入部。
しかしすでにダンジョンはハック&スラッシュされまくって魔物も宝物も少ない状況。すでに最深部まで探索されつくされた源五郎遺跡を去る人も多く、前章までの賑わいはなくなっているという状況。
そんな中でトキは、期待していたガチのダンジョン探検ではなく、ゆるいキャンパスライフを送ることになる。


そう。主役は相変わらず古美術部なんですよ。中島、笹木、太田といったメンバーも当然続投。
しかしビックリするくらい、宇佐見くんとシオちゃんの気配がありません。まるでこの二人の存在だけを切り取ったようなカンジ。
唯一会話に出てきたのが、夏休みに実家に戻らない、東屋とトキが、宇佐見くんとシオちゃんが使っていた下宿を使うシーン。東屋が「前に後輩が少しの間使っていたらしい大丈夫だろ」というセリフだけ(後輩というのが宇佐見くんとシオちゃんになります)。
まるで最初からいなかったかのように話が進んでいきます。

8巻末では島に戻ってくると明言し、妊娠したシオちゃんと共に本土へ渡った宇佐見くんでしたが、どうしたのでしょうか。
宇佐見くんは阿螺井との最終決戦時に人間であることをやめてしまいました。そのため、いわば存在がチートです。新しい話を作る際に扱いが難しくなってしまったのは分かるのですが、でもここまで存在が消されると、それはそれで旧来のファンとしては寂しいものがあります。

それに、ここまで宇佐見&シオの存在を消すのなら、古美術部を続投させる意味はなかったと思います。
古美術部の面々はダンジョン高校の前身となる「登校最前線(ちょっと怪しい黒森さん家に収録)」以来のキャラなので、おそらく作者的に思い入れのあるメンバーなのでしょうが、宇佐見くんとシオを見続けてきた読者としては脇役にすぎないわけです。その脇役の面々は据え置きで主人公だけ入れ替わった事が、果たして良いことだったのか。
トキに主人公が交代するにしても、全然別のサークルにするなり、時代を下らせるなり方法はあったような気がしました。

 

また、主人公が陽性の東屋&トキコンビに変わったせいか、前章まであった陰湿な派閥争いや複雑な人間関係もばっさり切られ、ゆるい人間関係の中で話が進んでいきます。話もユルいダンジョン(キャンパス)ライフの話が中心で、肝心のダンジョンも浅いところまでしか潜りません。前章にあった緊張感はすっかり吹き飛んで、なんとなくダンジョン+日常系といった具合になってしまっています。

テイスト的には1巻~2巻からの新章のスタートとしては(若干スローですが)妥当な出だしだと思います。
しかし1巻~2巻には「阿螺井」というトリックスターがいて人間関係に緊張感があったことや、どこか影がある不思議な少女、シオの存在があったこと、宇佐見が拾ったオーパーツの話などストーリーの縦糸横糸になる要素がしっかり詰め込まれていました。

しかし9巻にはそのような今後につながりそうな要素がほとんどありません。新キャラのトキも、現時点では極めて普通の女の子です。

枯れたダンジョンと、バックグラウンドが薄いキャラクター、すでに語り尽くされた前章からのキャラクターを配して、ここから話広がっていくのかな…? と、若干不安にさえなってきます。
8巻でキレイに話が収まったのに、そこからわざわざ話を継続していくとなれば、話を続けた理由と、前章を上回るストーリー・プロットがなければ、ファンは納得しないと思います。だらだらと続けられて「8巻で終わりで良かったね」とならないように、頑張ってほしいなと思います。

…とまぁ、批判めいた感想になってしまいましたが、前章で壮絶な戦死をとげた鵜狩川先生のメガネの話や、パーティに女子が入ることで起きたサークルクラッシャーのエピソードなど、個々のエピソードには見所はあります。ただどれも次につながる話ではなくて、このままストーリーものとして進んでいくのか、個別エピソードの日常系になっていくのか、という分岐点にさしかかった巻といえます。

ただ、まことに勝手な印象ですが、山西先生の絵柄の魅力は、余白が生み出す影と寂寞感と、ある種の諦観だと思っています。その雰囲気が死と隣り合わせのダンジョンとマッチしていたため、ある種の緊張感が生まれていたものだと思います。
しかしここにきて、陽性の主人公を迎えて明るい日常系にシフトしていくとなると、山西先生の絵の良さを殺してしまうのではないかと不安になります。簡単に例えをするなら、山西先生の絵で「ダンジョン飯」は成立しないということです。
私はそんな山西先生の絵がとても好きです。なのでできるなら、日常系ではなく、前章のような謎の疑惑に満ちたダンジョン生活を描いてほしいなぁ…と思わなくもなく。

次巻は夏休み以降の話となります。8巻の終わり(三学期の春休み?)から十月十日も過ぎたわけで、子供を抱いたシオと宇佐見くんが復帰するかもしれません。
ダンジョンに潜らないまでも、キャラとしては出てほしいな…と思いつつ、おそらく来春になるだろう10巻を待ちわびることにします。

(文/赤蟹)


赤蟹

スベスベマンジュウガニ並みに猛毒を吐きまくる赤い蟹の人。「てらどらいぶ」の裏ボス。サイト管理とコーディング、デザインなどを担当。文章を短くできないのが悩み。

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